【パティシエ修行日記 Vol.1】鳩小屋と自転車と、ケーキ屋宣言。~幼少・中学時代~

【2025年のシェフより】

こんにちは、魔法洋菓子店ソルシエの伊與田(いよた)です。

普段は真面目にお菓子作りについて語っていますが、今日からは少し時計の針を戻して、私がパティシエになるまでの「修行日記」をお届けします。

読み返すと冷や汗が出るような失敗や、若さゆえの暴走ばかりですが(笑)、このドタバタがあったからこそ、今のソルシエがあります。

まずは、高知で生まれ育ったワンパク時代のお話から。どうぞ笑ってやってください。

はじめに:職人道への一本道

1964年、高知県高知市生まれ。気がついたらこの職業一本道……。何故か反れることなく、流れるままに任せてしまった職人道。

「まぁ、何とかなるか」が口癖の自分。何の為に菓子屋をやっているのか? 何か役割があるのかな? と悩み考えながら、日々生かされております。

そんな私の原点。それは、昭和の香り漂う高知での日々にありました。

泣き虫小僧と鳩小屋事件

高知市中水道に生まれ、動物好きの泣き虫小僧でした。幼年期に母と離別し、近くの保育園に通っていましたが、もの心ついた時には母の姿はなく……。運動会のときはいつも園内にある鳩小屋に隠れていました。

結局、先生に見つかり無理やり引っ張り出されてフォークダンスを踊らされた記憶があります。しかし、よく臭い鳩小屋なんかに隠れたもんだ、と我ながら思います。

とにかく父親によく可愛がられて、いろんなところへ連れて行ってもらいました。一番記憶しているのは、高知大丸へ行く時、父親に「お母さん買ってきて」と言ったこと。大笑いされました。

当時は母親がいないことにコンプレックスを持つことなく、当たり前に受け止めて「どこかで仕入れてくるもの」と錯覚していたのでしょう。今だから言える人生最大のボケですね。

将来の夢は「パン屋さん」?

なんだかんだと言いながら小学校に入学!高知市立一ツ橋小学校に無試験で入学(あたりまえか……)。

真新しい学校の第1期生でした。小学時代は近くの川(久万川)で魚とりや川海老をとったり、海で泳いだりと典型的な野生児。

低学年のころ、「将来の夢」という作文で、何故か勝手に鉛筆が原稿用紙の上を走り、「パン屋さんになる」と書いてクラスで笑われたことを覚えています。

当時、プロ野球選手やパイロット、医者が夢の主流だった時代ですから、友の目には不思議に映ったのでしょう。その後は将来の夢なんて二度と書くことはなかったですね。

伝説の自転車クラッシュ

大きな怪我をすることもなく無事に育っていると思いきや、超ドジな怪我が襲ってきました。

川へ遊びに行く途中、自転車のカゴに虫取り網を挿して意気揚々と自転車をこいでいると、突然前転……。車輪のスポークに網の棒(竹)が引っかかってロック状態になり宙に舞い、ブロック塀の角に顔面激突!お見事!額から鼻、口、顎と縦に線が入ったような切り傷。

口は3針縫う怪我……。めちゃめちゃカッコ悪かったですね(笑)。今でも傷が残ってますが、元気印とでもしておきましょう。

運命を変えた、友人の一言

時は流れ、高知市立愛宕中学校に入学。「よっし、今度こそ勉強を頑張るぞー!」と心に固く決心しました。……が。意思が弱いのか、やる気がないのか、小学校の延長で勉強嫌いは直りませんでした。

3年生になり、入試という節目が訪れましたが、私は全く焦ることなくマイペース。「高知商業に行きたい」と先生に言った瞬間、間髪入れずに「無理」の回答。そりゃそうだなと納得しました。そんなある時、友人がクラス全員の前で私に言いました。

「お前、将来ケーキ屋になるんやろ?」

「なんーーで?」と聞くと、彼は小学生の頃の作文(パン屋)を覚えていたらしく、突然の爆弾発言!

まあ、そういやそうだったな~と思い出し、みんなの前で引くに引けず……「おおぅ。ケーキ屋になるぞ!」と豪語してしまいました。これが、私の人生が決まった瞬間でした。

15歳、旅立ちの時

学歴社会で高校に行くことが当たり前だった時代。周りの大人たちは「就職組」と知ると冷ややかな目線でしたが、友達は「凄いな~」「頑張れよ」と応援してくれました(どこまでが本音か定かではないですが……)。

やがて卒業。地元のケーキ屋さんに「働かせてください」とお願いしに行ったところ、募集枠がなかったのですが、幸いにも大阪のお店を紹介していただきました。

卒業後わずか5日。15歳の春、私は大阪行きの飛行機に乗っていました。ここからが「地獄の修行」の始まりとは、まだ気がついていないのであった……。(続く)

【編集後記:2025年の現在地】

こうして半ば勢いで始まった私の菓子職人人生。次回は、大阪での「6畳一間に先輩4人の寮生活」と「衝撃の5万円給料生活」をお届けします。現代では考えられない修行時代のリアル、お楽しみに。

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